進捗状況

2012年2月21日

2/17(金) 実大2階建て通し柱試験体振動台実験@京都大学防災研究所

速報=山田耕司(振動台実験検証WG)

はじめに
「振動台実験検証WG」では,2/8 – 17の6日間に京都大学防災研究所の強震応答実験装置(振動台)を用いて,「通し柱効果」に関する基礎実験を行いました. ここでは「通し柱効果」を図1のイメージで定義しています.他の構造形式で言えば,「連層耐震壁により建物各層の層間変位を均一化する」ことになり,連層耐震壁の役割を大断面の通し柱に期待しています.

図1 「通し柱効果」のイメージ

実験概要

実験は,礎石および柱脚仕様の異なる6寸通し柱を用いた試験体を用意し,100cm/s2から順次加振しています.試験体は,図2に示す2階建て木造軸組(石場建て仕様)で,平面形状は2間×3間(3,640mm×5,460mm)とし.積載荷重として,各階40kNの錘を載荷しています(層重量は,1階で55kN,2階で51kN).通し柱は6寸で,本数は6本としています.礎石および柱脚は,「平礎石+地長押付き石場建て」,「平礎石+石場建て」,「石造ダボ付き礎石+石場建て」,の3種類としています.

耐震壁の上下階のバランスは,2種類:「1階2階のバランスの良い」「1階2階のバランスの悪い」とし,「1階2階のバランスの良い」試験体では1階壁4枚2階壁4枚,「1階2階のバランスの悪い」試験体では1階壁4枚2階壁8枚としています.耐力壁は荒壁パネルを用い,胴差は雇いホゾ(30*120mm)を介して通し柱に緊結しています.なお安全を期すため,ワイヤーロープによる倒壊防止を行っています.

図2 地長押付き仕様・通し柱(6寸)試験体(1階2階のバランスの悪い) 立面図 (クリックで拡大)

前回(2011年7-8月)の実験(柱脚固定の土台仕様)

一連の実験では試験体を使いまわすため,1/30radで加振を止めています.

まず,比較対象とした柱脚固定の土台仕様の実験結果(2011年7-8月)を説明します.

写真1 通し柱(4寸6本)試験体(土台仕様の事例)

土台仕様の実験で得られた層間変形角を図3に示します.

図3 柱脚固定の土台仕様 各階層間変形角の対比(クリックで拡大)

通し柱(4寸)試験体では,通し柱本数,1階2階のバランスの良し悪しに関わらず,同じような層間変形角が計測されました.また,最後の実験では,加振加速度が大きくなるにつれ,1階に変形が集中し,450ガルの加振で,通し柱の1階柱頭部において折損が生じました.

一方,通し柱(6寸)試験体では,通し柱(4寸)試験体程ではないにしろ,通し柱本数,1階2階のバランスの良し悪しに関わらず,同じような層間変形角が計測されました.しかし,図からも分かるように,通し柱(4寸)試験体に比べて,各階の層間変形角の差が少なくなっています.その後,600ガルまで加振しましたが,通し柱(6寸)試験体では通し柱の折損は観測されませんでした.なお,雇いホゾを止めていた鼻栓は曲げ破壊をしたため,柱と胴差の間に隙間が生じていました.

今回の実験(石場建て試験体)

前回の実験より,本実験で目的としていた「通し柱効果」が確認されました.そこで,今回の実験では,石場建て仕様の試験体で同様の実験を行い,石場建て仕様における「通し柱効果」の有無を確認します.

石場建ての試験では,2/8,9に通し柱を挟み込んでつなぐ「地長押」のある試験体を,2/13,14には「地長押」を外した状態で試験,2/16,17には「石造ダボ付き礎石」の石場建ての試験体で実験し,その性状の違いを観察しました.

図4 石場建ての柱脚詳細

図5〜7に結果を示します.

図5 地長押付き仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

図6 石場建て仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

図7 石造ダボ付き礎石石場建て仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

 
結果として,柱脚固定の土台仕様とほぼ同程度の層間変形角を計測でき,柱脚を固定しなくても,柱脚固定時と同等の通し柱効果を得られることが分かりました.

おわりに
以上の実験より,土台仕様および石場建て仕様双方において「通し柱効果」が確認されました。なお,実験に際しまして,ご理解とご協力をいただきました方々に厚く感謝申し上げます.

2012年2月16日

2/3 腰掛け鎌継ぎと長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験@横浜国立大学

速報=中尾方人(実験検証部会 要素実験WG)

2012年2月3日(金)に横浜国立大学にて、腰掛け鎌継ぎと長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験を行い、4名の方にその様子をご覧いただきました。

 
腰掛け鎌継ぎの引張試験

図1は腰掛け鎌継ぎの試験体で、このタイプの試験体は、表1のように、鎌の長さや材せいなどが異なる計7種類ですが、そのうち公開実験では、No.6の試験体3体中2体の試験を行いました。男木、女木それぞれ径21mmの穴で試験装置に取り付け、材軸方向に引張力を加えました。

図1 腰掛け鎌継ぎ試験体

表1 腰掛け鎌継ぎ試験体一覧

図2に試験体に加えた引張力と男木-女木間の変位との関係を示します。

図2 腰掛鎌継ぎの引張試験結果

2体とも、男木の鎌頭部にせん断破壊が生じて荷重が低下し始めましたが、完全に破壊したわけではなかったため、荷重の低下は比較的ゆるやかでした。写真1と写真2にそれぞれ1体目と2体目の破壊状況を示します。

写真1 腰掛け鎌継ぎNo.6 1体目

写真2 腰掛け鎌継ぎNo.6 2体目

 
長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験

図3に長ほぞ込栓打ち仕口試験体を示します。このタイプは表2に示すように、土台のせい・幅、込栓の径や形状、ほぞの厚みが異なる計7種類ですが、公開実験ではNo.1の3体中2体の試験を行いました。試験体の土台を固定し、柱に設けた径21mmの穴で試験機と接続し、柱に引張力(引き抜き力)を加えました。

図3 長ほぞ込栓打ち仕口試験体

表2 長ほぞ込栓打ち仕口試験体一覧

図4に長ほぞ込栓打ち仕口試験体の引張荷重と柱-土台間変位との関係を示します。

図4 長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験結果

いずれの試験体でも、まず10kN〜12kN付近で込栓が「へ」の字に折れるものの、荷重は上昇を続け、およそ15〜18kNのときにほぞにせん断破壊が生じて荷重が低下しました。写真3と写真4は、1体目と2体目の試験終了時の写真です。込栓が土台内部で折れ、土台から出ている端部が下がっていること、込栓は中央で折れ、ほぞにはせん断破壊が生じていることが分ります。

写真3 長ほぞ込栓打ち仕口試験体(No.1) 1体目  

写真4 長ほぞ込栓打ち仕口試験体(No.1) 2体目

2/11足固め仕様土壁フレーム水平加力実験@岡山理科大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

2/11(土)午後3時より、岡山理科大学工学部建築学科の構造実験室で足固め仕様土壁フレーム水平加力実験が行われました。ただでさえ寒い日でしたが、コンクリートと鉄骨で作られた大空間の寒いこと寒いこと。この実験を担当されている土壁WGの山崎雅弘先生は冬男なのですが、さすがにシャッターを締めて実験を行なっていました。

締まっているシャッターの内側が構造実験室

この日、加力するのは貫が3本入った足固め仕様の軸組で、軸組だけの耐力を知るために行う地味な実験です。

梁と足固めの間に、貫が3本入っています。

昨年度の実験で得られた土塗り壁の耐力から軸組の耐力を差し引くと、土壁だけの耐力が求められます。差し引く軸組分の耐力を計測するためのデータ取りをするというのが、今回の試験の目的です。試験体には柱に合計2tの錘を掛け、1/480rad、1/240rad、1/120rad、1/90rad、1/60rad、1/45rad、1/30rad、1/20rad、1/15rad、1/10radまでの加力をプラス方向、マイナス方向の各3回ずつ、都合30回の加力を行いました。

傍らで次の試験体の歪ゲージ貼りを黙々と行なう学生さん達

 
1/120radあたりから軋み音
だんたんテンポが早くなる

実験が始まってまもなく、1/120radあたりからバキッ…バキッ…と少しずつ木が軋む音が始まりました。1/90radになると、軋み音は早くなり、1/60radではお囃子のようなテンポの早い音が実験室に響きます。1/45rad・2回目の加力の際には、これまでとは違う、少し大きな音が聞こえました。柱頭のホゾにヒビが入り始めた音かもしれません。担当の山崎先生によると、これまでは1/20radあたりで柱頭のホゾが壊れたのではないかというような大きな音がしたという事でしたが、今回は1/20radでは特に大きな音はせず、相変わらずお囃子のようなテンポの早い音が続いていました。

 
1/15radあたりでホゾの破壊と耐力の低下

それでも、さすがに1/15radに入ると、1回目加力(引き)でバーンという大きな音がして「これはいよいよホゾが壊れたのではないか」と思いました。荷重と変形を表す履歴曲線は音がした部分で少し凹みました。その後は何事もなかったかのように1回目加力が進むかと思った矢先に、押し切ったところで前より大きな音がしました。この時も履歴曲線はグッと凹みました。

ホゾが壊れたと思われるところで履歴曲線に凹みがあらわれた

ホゾは壊れた(だろう)後は耐力が低下し、2回目加力の履歴曲線は1回目とは違うループを描きました。一見かなり耐力が落ちたように見えますが、錘を考慮して修正すれば、そう極端な落ち方ではないそうです。耐力としては2kNくらいでしょうか。(山崎先生による速報をお待ちください)

ホゾ破壊後の履歴曲線

ホゾ破壊後の履歴曲線

 
最終加力1/10radへ

さて、いよいよ1/10rad加力が始まりました。1/15radの時よりひときわ大きな音が断続的に続きました。まるで軸組のあちこちが悲鳴をあげているようです。足固めの竿も浮き始めました。満身創痍の状態で実験は終了しました。

実験終了時の試験体

足固めまわりのホゾ破壊の様子

実験終了までの履歴曲線

 
解体部材に見るホゾの破壊状況

実験室にこれまで実験を行なった5体の試験体の解体部材がありました。1/10まで加力しきった試験体の全てにおいて、柱頭のホゾは壊れたそうです。


 

2012年2月9日

1/24 全面土壁土台仕様静的加力試験@金沢工業大学

速報=河原大(実験検証部会 事務局)

1月24日(火)は大きな寒気が近づき、北陸を中心に日本全国各地で寒い、雪の降る一日となりました。富山県から見学に来られた方からも朝にご連絡をいただき、降雪の様子をお答えしました。富山県ではかなり積雪があったようですが、金沢にはほとんど積もっておりませんでした。

金沢工大で行われている今回の一連の実験は、土塗壁の小舞の間隔が変わった時、復元力特性・破壊形態にはどのように影響するのかということを主に知るために行われているものです。

試験体

図1 小舞間隔の違い:左が35mm 右が55mm(写真クリックで拡大します)

当日は小舞間隔が55mmのものについて、午前中に1P幅のもの、午後に2P幅のものというスケジュールで実験を行いました。見学者の方には、大変形(1/30〜1/10[rad.])辺りで見学いただきました。

写真1 実験中の様子

試験結果

図2 復元力特性のグラフ(写真クリックで拡大します)

2種類の試験体が描く復元力特性は、ほとんどちがいがなく、最大耐力だけで見ると、小舞間隔が35mmの方が少し大きいかというところです。

損傷状況

正面から見た各変形角での損傷状況としても、両種類とも明確な差は認められないように見受けられます。

写真2 小舞間隔35mmの変形の様子(写真クリックで拡大します)


写真3 小舞間隔55mmの変形の様子(写真クリックで拡大します)

個人的には20mmの差は大きく、間隔の狭い方が大変形角での土の剥落が大きかったり、これによって塑性域での曲線の形状が変わったり、などということを想像していたのですが、速報程度の結果からだと、あまり影響はないということになっています。

ほぞの損傷状況や計測した構面のせん断変形などについて詳細な検討を行って、仕様による影響がどの程度あるのか、もしくはないと言えるのか、ということを明らかにしていく予定です。

1/21 雇いほぞ込栓接合部の曲げ試験@京都大学生存圏研究所

速報=森田秀樹(宮崎県木材利用技術センター)

1月20日(土)午後、「車知仕口引張り・曲げ試験」と並行して、宮崎県木材利用技術センターに割り当てられた担当分の「雇いほぞ込栓接合部」の曲げ試験も行いました。

雇いほぞ及び込栓の大きさ・形状、梁背などを変えた11種類の試験体を用意して実験を行っていますが、公開実験では下に示すNo.1(標準的な試験体)とNo.8(込栓中心から雇いほぞ端部までの距離が短い試験体)の純曲げ実験を行いました。

図1 No.1(標準的試験体)とNo.8(込栓中心から雇いほぞ端部までの距離が短い)


写真1 試験装置にセットされた試験体

試験結果

図2 引張試験荷重-変形関係


加力は柱の引き側(+側)→押し側(-側)の順で行いました。両者ともに引き側(+側)60mmで雇いほぞのせん断破壊が生じ、No.1が高い耐力を示しました。その後、押し側(-側)でも変形量は同程度でしたが、耐力はNo.1の方が高くでました。(実際はNo.8の最後の曲線があったのですが、ノイズがひどくて掲載できませんでした)

試験体の最終変形状況

写真2 No.1試験体の最終変形

他条件のほとんどの試験体と同様に、外見での損傷は認められませんでした。

写真3 No.1試験体の込み栓の最終変形


写真4 No.8試験体の込み栓の最終変形

いずれの試験体も込栓にはわずかなめり込みが認められましたが、曲げ破壊などの損傷はありませんでした。雇いほぞのせん断破壊により耐力が決定されました。なお、No.8は込栓穴に隣接して節が存在しており、これが割裂を生じた要因になったかもしれません。

雇いほぞ-車知栓接合部の曲げ実験と比較して

同時に同じ場所で行った北守先生担当の雇いほぞ-車知栓接合部の曲げ実験との比較しますと、車知栓の場合は梁の幅方向に開きながら(車知が回転しながら)破壊に至ったようですが、込栓の場合は幅方向への開きはほとんどありませんでした。

車知仕口の引張り・曲げ実験の速報はこちら

1/21 車知仕口引張り・曲げ試験@京都大学生存圏研究所

速報=北守顕久(京都大学生存圏研究所)

実験検証部会 要素実験WGでは、伝統構法接合部の中でも主要な回転抵抗要素である車知仕口について、様々な各部の寸法条件をパラメータとした引張試験と対称純曲げ実験を行っている。

1月21日(土)の13時から16時まで、京都大学生存圏研究所木質材料実験棟において、引張試験、対称純曲げ試験の3条件計3体について公開実験を実施し、荷重-変形履歴曲線や破壊性状を観察するとともに、これまでに実施した結果を踏まえて各寸法要素パラメータが及ぼす影響について説明を加えた。京都府近郊の建築士、確認検査機関、工務店代表、学生等、計6名の参加あった。

写真1 公開実験観察の様子

試験の背景

伝統構法建築物の耐力評価に際し、接合部の強度性能の評価は重要な因子である。各地域や対象物件でさまざまに異なった樹種、寸法、要素形状を持つ伝統構法接合部に対して適切な評価を行うためには、材料や寸法の持つそれぞれの働きを明らかにする必要がある。本業務ではこれら伝統構法接合部に対して、将来的な算定式による評価法の確立を目指した実験的な耐力性能の検証を行っている。本項目ではそのうち、主に回転抵抗を期待して主要な柱-梁接合部に用いられる、雇い実-車知栓留め仕口(以下車知仕口)についての実験経過報告を行う。

試験方法

車知仕口に対しては①引張試験(K1)、②対称純曲げ試験(L1)の2加力条件での実験を行っている(図1)。なおこれは、車知仕口に作用する力がより明快な条件下で性能評価を行うためであり、実際の接合部においてこの力学条件が主要となるわけでは無い。①引張試験(K1)については単調加力を行い、②対称純曲げ試験(L1)については見掛けの接合部回転角を徐々に増加させる正負交番1回繰り返し載荷を行った。

図1 引張・曲げ試験装置(画像をクリックすると大きく表示します)

接合部の型式は、断面120×120mmのスギ柱に、断面120×240mmのスギ梁を両側から取り付け、断面30×120mmのヒノキ雇い実を挿入し、7.5×30mmのシラカシ車知で止めつける仕様を標準とし、図2に示す各部の寸法条件をそれぞれ変化させ、K1で12条件、L1で10条件に対し、それぞれ3体ずつの実験を行った。なお、柱、梁に用いたスギ材は静岡産の天然乾燥芯持ち材であり、含水率が20%程度のものであった。

図2 車知仕口各部の寸法パラメータ

 

表1:①引張試験(K1)の寸法パラメータ


 

表2:②対称純曲げ試験(L1)の寸法パラメータ

引張り試験の破壊性状

K1(引張)試験体については、目違の隅角部からの梁の縦割裂もしくは目違による柱の縦割裂の発生が破壊の起点となり(写真3)、その後梁が開くことによって車知が回転し(写真4)、最終的に車知が曲げ破断して耐力低下する(写真5)破壊性状がほとんどの条件で見られた。また車知を通常より扁平にした条件では、車知の圧縮座屈が先行することにより降伏する様子(写真6)も観察された。

写真2 破壊全景


写真3 破壊の起点


写真4 縦割裂の伸展


写真5 車知の曲げ折れ


写真6 車知の座屈


写真7 接合部の横割裂

曲げ試験の破壊性状

L1(曲げ)試験体については、K1(引張)と同様に多くは車知の回転に伴う梁の縦割裂により破壊を生じた(写真9)。一方でそれに先立って、K1条件ではあまり見られなかった梁端部におけるせん断破壊が徐々に伸展する様子も観察された(写真10)。

写真8 曲げ試験全景


写真9 梁の縦割裂


写真10 梁端部のせん断破壊

引張り試験の荷重-変形関係

図3に引張試験で得られた、片側接合部の荷重と変形の関係(初期すべりを除外し、3体を平均化したもの)を示す。

図3 引張試験荷重-変形関係

標準試験体(K1-1)では最大耐力約38kN、最大耐力時変位約5mm程度であった。また、全体的に最大耐力に達した後にやや急激に耐力低下する様子が観察された。

図3の結果の荷重を試験体の車知の長さで除し、車知の単位長さあたりの耐力に換算したものが図4である。

図4 引張試験荷重-変形関係(単位車知長さあたり耐力)

図4左上では梁せいおよび雇い実せいの異なる試験体同士を比較したが、試験体間で最大耐力や変形性能に大きな差は見られず、引張性能では概ね車知長さに比例して耐力が定まると考えられる。ただし、梁幅が大きいときにはやや初期剛性が高くなった。また、車知の位置が異なった(図4右上)としても、車知の耐力発現効率にはほとんど影響が無いことが分かった。一方で、車知の形状は特に初期剛性に影響を及ぼし(図4左下)、車知が厚くなると初期剛性が向上し、また、車知の扁平率が高まると、座屈によって早期に降伏が生じた。ただし、これらは最大耐力にはほとんど影響をもたらさなかった。一方で、雇い実導入溝の基部が無い場合や、目違いが無い場合には最大耐力が大きく低下した(図4右下)。

以上より、車知継ぎ手の耐力は梁の縦割裂によるものであり、目違で柱に収まっていることや、梁の溝が三次元的に基部で押さえられていることが梁の縦割裂を抑制する効果があり、車知仕口の引張耐力発現に大きく影響する事が明らかとなった。

曲げ試験のモーメント-回転角関係

曲げ試験における、仕口モーメントと回転角の関係を図5、図6に示す。なお、結果は図3と同様に、初期遊び等を除外した後、同条件3体の結果を平均化したものである。曲げ試験では車知側が引張力を受ける場合と圧縮力を受ける場合でそれぞれ抵抗要素が異なると考えられる。そのため、それぞれの結果を別々に表示した。

図5は車知-雇い実のある側が引張力を受ける場合であり、一般に車知仕口の耐力発現機構として期待される加力方向である。

図5 曲げ試験モーメント-回転角関係(車知側引張)

標準型(L1-1)では最大モーメントで約6kN.m、最大モーメント時変形角で1/20radの結果であり、最大モーメント後には急激に耐力低下を示した。梁せいは耐力性能に最も強く影響し、梁せいが大きくなると耐力が向上するが、反面、変形性能は低下した。その他の各寸法条件の違いにより、若干の耐力性能に違いが見られたが、その影響度合いについては今後の検討課題である。

図6には車知-雇い実のある側が圧縮力を受ける時の結果を示した。

図6 曲げ試験モーメント-回転角関係(車知側圧縮)

図5と図6の結果を比較すると、標準型の寸法条件では、初期剛性については車知圧縮の結果が車知引張と比べて概ね半分程度と柔らかいが、最大耐力については概ね4kN.mと、車知側引張の場合の2/3程度の耐力を有した。車知側圧縮条件では雇い実が肘木のように働き、肘木の先端と梁の小根ほぞとの間で鉛直偶力を生じて耐力発現すると考えられ、最大モーメントは肘木(雇い実)が曲げ折れることで決定された。結果として車知側圧縮条件では急激な耐力低下を生じる履歴性状を示した。

まとめ 
実験の結果を以下にまとめる。

•車知仕口の引張耐力は車知が回転力を受けることによって、梁が縦に割裂破壊することによって定まる。
•目違や雇い実導入溝の基部は、それぞれ梁の割裂を防止し、耐力を高める働きをしている。
•車知を厚くしたり扁平率を変えると初期剛性や降伏耐力に影響するが、最大耐力にはほとんど影響が無い。
•曲げ試験において、梁せいが大きくなると初期剛性は向上するが、半面変形性能が低下する。
•曲げに対しては、車知側が引張力を受ける場合のみならず、圧縮力を受ける場合においても抵抗機能を持ち、標準型の試験条件においては、初期剛性で1/2程度、最大耐力で2/3程度の耐力性能を有する。なお、この圧縮側の抵抗メカニズムでは梁せいが大きくなってもそれほど性能向上は見られない。
•引張試験の結果からの曲げ性能の評価法については今後の検討課題である。

2012年1月29日

1/16 小根ほぞ差し込み栓打ち・小根ほぞ割楔締め曲げ試験@秋田県立大学木材高度加工研究所

速報=岡崎泰男 (実験検証部会 要素実験WG )

1/16(月)に秋田県能代市の秋田県立大学木材高度加工研究所南試験棟にて、小根ほぞ差しのT字型接合部の曲げ試験を公開し、施工者、設計者、研究者とさまざまな職種の方が数名、参加してくださいました。
この実験は、小根ほぞ差し接合部(割楔・込み栓・鼻栓)の各部寸法の違いが接合部の復元力特性や破壊形態にどのような影響を及ぼすかを検討するために行うもので、評価式作成のために、種々のパラメータの試験体について計75体の実験を実施しています。

 
試験体と加力装置の概要

今回の公開試験は、担当した小根ほぞ仕口接合部のT字型試験体計75体のうち、小根ほぞ差し込み栓打ち接合部、小根ほぞ差し割楔締め接合部タイプのもので、梁背が最も大きいタイプ(梁背300mm)の試験体各3体、計6体を実施しました。下記の図と写真に示したように正負交番で1回ずつ繰り返し、破壊に至るまで加力し続けました。

 
小根ほぞ差し込み栓打ち接合部試験の結果

小根ほぞ差し込み栓打ち接合部試験 モーメント-回転角曲線(包絡線)

すでに試験済みの今回より梁背が低いケースでは、ほぞ部分が割裂するか、もしくは込み栓が折れ曲がり、折れた込み栓の先端がほぞに引っ掛かった状態で徐々に荷重が下がっていくかいずれかの破壊形態を示したのですが、今回は梁背に対して柱が短かったこともあってか、込み栓が曲げ破壊を生じた後、栓部分から生じた亀裂が柱端部まで達する形で、柱を破壊をしてしまいました。

込み栓から入った亀裂が柱端部まで進展

込み栓の曲げ破壊

 
小根ほぞ差し込み割楔締め接合部試験の結果

小根ほぞ差し込み割楔締め接合部試験 モーメント-回転角曲線(包絡線)

割楔締めタイプでは、まず割楔の先端部分からほぞに亀裂が入って楔が効かなくなり、その後は小根ほぞがめり込み破壊を起こしながら徐々に荷重が下がっていくという経過をたどりました。ただし、このタイプは、割楔の打ち込み具合によってかなり変形挙動が変わってしまうので、解析は困難であると思われます。

割楔の折れ、ほぞ端部の圧壊

割楔先端部および節の部分で曲げ破壊

割楔先端部分からほぞが破壊

2012年1月28日

1/16 追掛継・金輪継・ 台持ち継ぎの引張り試験@日本建築総合試験所

速報=完山 利行(日本建築総合試験所)

1/16(月)に大阪府吹田市の財団法人日本建築総合試験所の本部構造実験室で、3種類の仕口継手の引張強度試験を公開し、4名の方にご参加いただきました。

試験体
今回は次の3種類を試験しました。

(左)追掛け継ぎ(栓なし、栓あり)(中)金輪継ぎ、(右)台持ち継ぎ

試験結果と考察
試験方法としては、振れ止めローラーで面外への移動を拘束し、加力治具を介して単調漸増載荷による引っ張り力を加えて、試験体を破壊に至らしめました。

荷重(P)-変形(δ)関係のグラフです。追掛け継ぎ(栓なし) は黒、追掛け継ぎ(栓あり) は赤、金輪継ぎは緑、台持ち継ぎは青で示しています。

変形が10mmに至るまでの部分を拡大すると、次のようになります。

グラフから以下のようなことが読み取れます。

・最大荷重は、追掛け継ぎ(栓有り)(67.7kN)が最も高く、追掛け継ぎ(栓なし)(56.2kN)、金輪継ぎ(47.4kN)、台持ち継ぎ(33.9kN)の順。
・初期剛性(変形1mm時の荷重)は、金輪継ぎ(34.7kN)が最も高く、追掛け継ぎ(栓有り)(30.1kN)、追掛け継ぎ(栓なし)(18.5kN)、台持ち継ぎ(8.0kN)の順。
・追掛け継ぎの栓有りは栓なしと比較すると、最大荷重で約20%、初期剛性で約63%高い値を示した。
・台持ち継ぎは、最大荷重および初期剛性とも低いが、最大荷重後の荷重低下は小さく、大きな変形(約22mm)まで破壊しなかった。

破壊状況
それぞれが破壊に至った状況の写真をご覧ください。

追掛け継ぎ(栓なし)

追掛け継ぎ(栓有り)

金輪継ぎ

台持ち継ぎ

10/19 古材めり込み・仕口接合部実験@立命館大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

10/19(水) に立命館大学びわこ・くさつキャンパス内セル実験室で、棚橋秀光教授(立命館グローバル・イノベーション研究機構)の元、材料部会古材WGが、「古材めり込み・仕口接合部実験」を公開実験として行いました。実験の目的は、古材の強度と変形性能を調べることです。

立命館大学セル実験室

実験のねらいと試験体

まず、木材のめりこみ等を専門に研究されている棚橋先生から、委員会のメルマガでの呼びかけにこたえて集まった7名ほどの見学者のみなさんに、実験の概要についての説明がありました。今回の実験では、伝統的構法の木造の耐震性評価において、古材のめりこみや仕口の復元力特性が新材とどれくらい違うのかを調べるというねらいがあることが分かりました。

見学者に説明する棚橋教授

公開実験の時の試験体は、通し貫仕口試験の試験体に湖南民家の解体スギ(推定築170年)から切り出した100mm角の柱(スギ)と30×100mmの貫(アカマツ)を、めり込み試験に同じ湖南民家の解体アカマツより採取した30×30×90mmと30×30×30mmの木材片を用いました。

古材から削り出した試験体を用いる

仕口接合部実験

はじめに、十字型通し貫仕口試験を行いました。実験のポイントは仕口の評価にあります。そのために、最も単純な形状の仕口(つまり通し貫)を選んだという事でした。本当は楔を入れず、柱とピッタリ同じサイズの貫を入れたかったが、それでは試験体製作ができないので、詰物のような平行楔を入れたとのことでした。

仕口周辺の4カ所に変位計がとりつけられ、柱頭で最大で回転角0.2rad(1/5)まで加力しました。平行四辺形状にかなり変形しながらも、柱も貫もどちらがどちらかを破壊するということもなく、粘り強くもちこたえました。荷重計・変位計で計測されたデータが、パソコンのモニターにグラフとして現れます。

古材木片のめり込み試験
 
次に、木材片のめり込み試験を行いました。試験体は2つの古民家に使われていた材を切り出したそうです。スギ(建物の推定築189年、170年)アカマツ(推定170年)、ケヤキ(推定189年)の4種類の材について、それぞれ木口の年輪方向に対して平行、90度、45度で切り出した30×30×90mmの試験体と両隣から30mmの試験体を用意し、全面圧縮試験と挟み式めり込み試験を行なっているそうです。この日はそのうち、めり込み試験を見学しました。

圧縮ひずみ50%以上程度まで荷重をかけ、どのくらいの圧縮強度があるかを調べます。圧縮試験をすると、材料の性質に応じた、破壊のしかたをします。木材片はカチカチになるまで圧縮されながらも、破壊しないでもちこたえるのが印象的でした。ある程度以上の荷重がかかると、コンクリートの場合一気に破壊され、跡形もなく粉々に飛び散ってしまうそうです。壁土の場合は、土がグシャっという感じで崩れます。

試験体にグリッドが描かれているので、どのように圧縮したが、よく分かる

樹種、切断角度による違いを比較する


今回の実験で蓄積できたデータが、木材の構造的な特性を活かした伝統的構法の設計法構築に役立ち、古民家改修や古材を再利用した建物の耐震性能評価につながることを願っています。

2011年12月25日

12/21 建築学会シンポジウム「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望 」

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

キャラバン最終日から中2日。建築学会の中で組織されている 都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会主催「建築・社会システムに関する連続シンポジウム」の第14回として「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望」が建築会館ホールで開催されました。伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会も、共催として名を連ねています。

まず、主催の「都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会」の南一誠委員長から、委員会の概要についてのご説明がありました。次に鈴木委員長がシンポジウムの主旨説明を行い、その後、「伝統構法木造建築の課題」として、5つの講演が続けて行われました。

伝統構法木造建築の5つの課題

1. 伝統構法木造建築の法的な課題について

「法的な課題」は構造面以外で伝統構法の障害になっている事柄について、主に改正省エネ法をめぐって、すまい塾古川設計室の古川保さんが話されました。


伝統的構法の普及を遮る法的な課題として既に挙げられている排煙窓、シックハウス法、そこへ持ってきて更に追討ちをかける形で住宅版改正省エネ法が検討されているそうです。設計法ができて構造的な問題がクリアになったとしても、現在検討されている「住宅版改正省エネ法」(住宅全戸に適用)が成立してしまうと、断熱・気密だけで住宅の環境性能が評価されてしまい、伝統的構法の家を建てる事は至難の技になってしまうと言う訳です。

古川さんは「法律になってからでは遅い。伝統的構法が建て続けられるようになるためには、ひとりひとりが住宅版改正省エネ法の行方を見定めて、声を挙げて欲しい」と締めくくりました。

2.伝統構法木造建築物の歴史と構法について 

歴史構法部会の麓和善先生が、伝統的構法の変遷について、構法・歴史部会の調査や多くの写真・図を交えてわかりやすく講演をしてくれました。現在作成している設計法が、歴史的検証に基づいた設計法であると締めくくりました。

3. 検討委員会より3つの報告

・伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験の取り組みについて
・伝統的木造建築の現行の設計法の設計法の運用について
・伝統構法木造建築のこれからの設計法の考え方について

それぞれ、鈴木祥之委員長、齋藤幸雄主査、奥田辰雄主査が話されました。

鈴木委員長は講演の最後を「伝統構法は構造力学的には難しいがひとつずつ解明していくと最先端の技術となると信じている」と結びました。運用マニュアルや設計法についての完成スケジュールに対する質問があり、実務者の運用マニュアルや設計法に対する期待の大きさが感じられました。

パネルディスカッション〜翻弄され続ける伝統的工法の行方は?

後半のパネルディスカッションでは、江原幸壱さんと、渡邊隆さんから2つの問題提起がなされました。

江原さんから提起されたテーマは「伝統構法木造を阻む要因について」。議論の開始に先立ち、「本当に地球温暖化はCO2が原因なのか?」を検証してもらいたいという事を「The road to hell is paved with good intentions(地獄への道は善意で敷き詰められている)」という諺を用いて訴えました。

渡邊さんからのテーマは「施工における人材育成の問題点について」大工の技能をどのように担保するのかという問題について、渡邊さん自身が現在行っている研修についての報告を含めて、問題提起をしました。

パネルディスカッションでは、自分達で自らの首を締めてきたのではないかという反省や、伝統構法に適した耐震改修については啓蒙が進んできているという報告もありました。後半は主に改正省エネ法や長期優良住宅について議論があり、会場からは「伝統構法で建てられないのは憲法違反ではないかとも思う」という意見や、「構造について“やっとここまで来た”と思っている矢先に改正省エネの追討ちをかけられている」という意見が聞かれました。

会場からは、東日本大震災の被災状況に対する質問、法律に翻弄され続けている状況を「国はどこまで丁寧に面倒を見てくれるのか」という皮肉を込めた意見、伝統的構法を阻む法律が出来るのは教育が問題なのではないかという意見、住宅版改正省エネ法には今のうちに対応していく必要があるという意見などがあがりました。

伝統的構法の危機的状況を打開するために

また、余りにも世間が木造住宅や伝統構法を知らないのは、一般に発信してこなかった事に責任があるという反省や、伝統構法の普及を考えると、林業、地域の活動、ライフスタイルも大切であるという意見が出て、鈴木委員長から「情報発信は重要である。来年以降から伝統構法に関するPRを行う」という発表がありました。最後は、検討委員会の当初からの目的である「伝統的構法の危機的状況を打開したい」という決意で締めくくられました。